腸のケア

便秘と便秘薬のはなし


センナと大腸メラノーシス


大腸メラノーシスとは?

 大腸メラノーシスとはセンナ、大黄(だいおう)アロエ等の大腸刺激性下剤(アントラキニン系)を長期にわたって飲み続けた結果、大腸を粘膜側から見た場合に通常よりも色は黒っぽく、ヒョウ柄になった状態が多い。

 大腸刺激性下剤(アントラキニン系)は長期に使用すべきでなく、やむを得ない時に1週間以内の使用にとどめ、塩類下剤に切り替えることが望ましい。また、痙攣性便秘等での使用は腹痛が起こったり、すっきり感がなく治療としては悪循環であり連用は不適当であると記述されている。(薬物療法の実際 第3版 山村雄一、織田敏次、五島雄一郎、清水喜八郎=日本消化器学の草分け的先哲)
 成分が同じであるにもかかわらず、銘柄を変えて市販品を服用し続けたり、病院処方薬も不定期な便秘に悩まされないため受診時に処方を受けて手元にとっておくが、やはり習慣的に服用し続けることで、徐々に大腸メラノーシスが進行するのである。
すなわち、大腸刺激性下剤は安易な連用を避けて、酸化マグネシウム等の塩類下剤に切り変えるべきである。
写真左:大腸メラノーシスで黒いヒョウ柄が確認できる。

写真右:健全な大腸の色調である

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メラノーシスの原因となる薬剤はアントラキノン系の大腸刺激性下剤である。

 ドラッグストアなどでは市販下剤、健康食品、ダイエット食品・飲料に含まれているものさえある。そのキャッチフレーズを見ても薬では「自然生薬で体にやさしい」健康食品では「毎朝すっきり」などと表現されている。

しかし、2009年のドイツエッセン大学の論文(Z Gastroenterol. 2009)では、「アントラキノン系の下剤が大腸メラノーシスを来し、大腸腺腫を増加させるということは明白であるが、なぜそのようになるのかメカニズムがはっきりしてはいないので禁止はできないものの、他にも副作用もあることなので、長期の使用をすべきではない」と述べている。

アロエ、センナ、カスカラ、ダイオウの含まれる市販下剤はとても多く、ほかに医療薬品では、アジャストA、ヨーデル、アローゼン、プルゼニド、センノサイド、セチロなどこれも非常に多い。漢方薬では大黄甘草湯、麻子仁丸の他に多く含まれている。

まず、欧米の教科書での大腸メラノーシスの記載をみてみる。
「大腸メラノーシスは通常、アントラキノン系の下剤の乱用によって生じる.アントラキノン系の物質はアロエ、カスカラ、センナ、ダイオウがある。この有病率は 大腸内視鏡検査または剖検では1~4%にみられる。この色素沈着はリポフスチンによって生じ、右の結腸から始まり、左の結腸に及んでゆく.虫垂や回腸末端にも波及してゆく。組織学的には粘膜の深部にまで及び、さらに重症では粘膜下組織にまで波及する。このような状況になれば多数の炎症細胞がその周りに生じ、粘膜層が肥厚し始める。さらにリポフスチンを取り込んだマクロファージ(白血球の一種)がリンパ節に多数見られるようになる。アントラキノン系の薬剤は腸の筋層の神経細胞を減少させ、炎症後に増加するシュワン細胞の過増殖を生じる」(Gastrointestinal Pathology、Raven Press、 New York、1989)

「アントラキノン系の下剤(センナ、アロエ、カスカラ、ダイオウ)を長期間使用すると、大腸に可逆的な色素沈着が生じる。1829年、クールベイラーが下痢を主訴とした患者の大腸が墨汁(チャイニーズ・インク)のようだったと記載したのが始まりとされている。ウイルヒョウは解剖された人に同じように黒色に染まった大腸を経験し、大腸メラノーシスという用語を初めて使用した。大腸メラノーシスはアントラキノン系を毎日4ヶ月摂取すれば生じ、断続的であっても9か月から1年摂取すれば生じる。大腸メラノーシスに合併した大腸癌の報告が数えられないほどあるが、大腸メラノーシスと大腸癌との関係は未だに不明である」(Gastrointestinal Disease、SLACK information、 NJ、2002)

クールベイラーはフランス(パリ)に存在した医者で、彼の報告した論文のタイトルは、「癌とメラノーシスの合併」であった。ウイルヒョウは現代の医学の基 礎を築いたドイツが生んだ偉大なる病理学者で歴史的偉人である。彼らが、限りなく疑ったのは黒くなる粘膜と大腸癌の関係であった。

ところで、大腸メラノーシスの状態になれば、単に色素が沈着するだけではなく、大腸の筋層の神経細胞が減少するということは便秘だからといって、アントラキノン系の薬を使用し続けると、薬の副作用で腸が動きにくくなり、弛緩性便秘や巨大結腸症になりうることを示唆している。「アロエがはじめはよく効いたのに、急に効かなくなった」という話はよく聞く話です.その原因は、副作用で大腸の神経の機能が悪化したためなのである。 

記述引用先  宇野コラム 便秘バイブル:第五章:大腸メラノーシスより(一部改変)

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